前回は20歳前後の、主として大学時代に書いていた詩を「舊詩帖」のタイトルで掲載したが、今回は比較的新しい詩(と言っても大部分が20年以上も前の作品だが)を「新詩帖」として載せてみる。鹿児島市に住んでいたころ書いたものが殆どだ。
今後も、この二つのタイトルに分けて未発表の詩を断続的に載せていきたい。
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キャンバスの中の永遠
モナ・リザ 君は
男だという噂もあったが
ルーブルの光と影のあわいより
数世紀に亙る人間の愚行の歴史を
微笑をもって見つめてきた
その優しき心根は
君だけのものだ
今 極東の小島の
この南の涯の地で
心寂しく病める魂たちに
ひと時の安らぎを与えて欲しい
しるべなき現代の荒野を彷徨う
心弱き僕たちに
(注:この作品は、以前鹿児島市で「モナ・リザ」という酒場を開いていた時に、PRのつもりで書いたものだ。)
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遠く 遠く
遠く 遠く
過ぎ去った風景の
懐かしさ
遥かに 遥かに
去っていった人々の
面影の近さ
それ故に
存在は本来不生不滅であり
時間は本来可逆なものであると識る
私の裡に
父と母が息づいているのではなく
私が父と母の中に
生きているのだ
人は生から死へと移行するのではなく
元々 死を包摂した存在として
そもそも 死に包摂された存在として
その完結を見るだけのこと
したがって 死という象(しょう)は
悲しむべきことでも
喜ぶべきことでもない
むろん
ー輪廻とやらもない