新詩帖4

 

白い花

 

匂う

匂うよ

白い花が

ニセアカシアの白い花が

遥かなる記憶の中で

 

見える

見えるよ

遥かに佐渡

日本海の没日が

その幻が

こんなに汚れきる前の

僕の魂の在りようが

 

故郷の時空の総量が

その幻の記憶が

今も僕の胸を狂おしくする

 

さて 今日僕は

桜島の灰をひっかぶり

焼酎の毒に犯され

二十世紀末という

歴史上最悪の時間へ

流刑中だ

 

人類の歴史に

進歩はなく

人間個体の時間的推移にも

進歩はなかった

 

二十世紀人たる我々は

創造の神に見放された

貧しい環境に甘んじている

 

今の世界の経済体系は

六十億の人間が喰うためには

已むを得ないシステムだが

そのため 喰う人間の本源性もまた

システム的に失われていく

 

せめて今僕のささやかな望みは

日本海の

汚れることのない日没に

立ってみたい

ただそれだけだ

 

故郷は

咲き匂うばかりの

白い花

 

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(注)仕事の都合で長く鹿児島にいたときに、故郷の新潟を思い出して作った詩だ。

ところで、今東京にいて、鹿児島が懐かしい。ああ、人生は実に皮肉だ。何やら時空がねじ曲がってしまっている。

 まあ、何の関係もないのだが、題名が同じというだけの理由で、好きだった山崎ハコ「白い花」を貼り付けておく。ご寛恕を。


山崎ハコ ライブ(1976) 白い花 - YouTube