舊詩帖3

 

十一月の海岸

 

背後に子供らの騒ぎをおいて

みつめる前方の佐渡が島に

小っちゃなクレーンが突きささる

私と海の間を

道路だ遮っていて

申し訳程度に車が走り 人が歩く

足元の枯れ草の下には湿った土

陽が翳るとふいに風が冷える

 

海のざわめきが

私の心臓の鼓動としっくりいかぬ日だ

となりに若い男がきて

ウクレレを弾く

 

目をしょぼつかせて

掌をみると

青い血管がすいてみえる

かつて 手の甲に吸いついていた蛭に

私の皮膚を添えて

むりにもぎとった日々を想い出す

ー血もうすくなった

 

雲から陽が出て

また私の背をかるく灼く

 

私のこっけいな頭脳の中へは何も入れない

入れたくもない

海の上でうすめられた

十一月の空にも

何もうかべたくない

 

十一月の

吐き気もない

眠い日