このところ、しばらくは音楽にあまり接しない生活が続いていたが、ふとしたきっかけで、ブダペスト弦楽四重奏団のベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集(ステレオ版)を買った。最初に、最も愛する作品131を聴き、その滋味あふれる、そして居住まいを正しくさせられるような厳格で高貴な演奏に接し、あらためて感動した。
そこで、手元にある作品131のCDを片っ端から聴き直してみた。
スメタナの1970年の演奏、アルバン・ベルクの1983年のスタジオ録音、ラ・サール、バリリ、グァルネリ、ブッシュ。
カペーはLP盤があるのだが、プレーヤーを処分したので今は聴けない。
ここで、どの演奏が良いかという演奏の評価はしない。ただ今現在、くり返し聴きたくなるのは、ブダペストとラ・サールなのである。
ラ・サールの演奏は、ドイツ・グラモフォンがブリリアント・レーベルで発売した"THE LATE STRING UARTETS"を5年ほど前に買っておいたもので、それほど真剣に聴いていなかったが、今度はあらためてじっくりと聴いてみた。
この曲は、今までずっとバリリとスメタナの演奏を愛聴していた。あらためて聴いたラ・サールの演奏は実に精妙で、そして厳しく、また激しく、しかも深遠で味わい深いものであった。
作品131以外では、作品130の凄まじいまでに畳み込む気迫と力強さに驚く。また作品132をこれほどまでに作品の構造をくっきりと表現して見せた鬼気迫る演奏を他に知らない。ラ・サールの演奏で、この作品の真価が始めて理解できた気がする。
ブダペストの演奏は冒頭に述べたように実に味がある。演奏にも録音にも雑味(ノイズ)があって、いい意味で演奏に陰影を与えていて心魅かれる。全集の録音は1958年~1961年で、第2ヴァイオリンがアレクサンダー・シュナイダーのものだ。その演奏には実存的な重みがあり、至高の演奏といえる。
なお、第2ヴァイオリンをジャック・ゴロデツキーが担当した1951年の演奏はyou tubeで聴くことができる。
Beethoven - String quartet n°14 op.131 - Budapest 1951 - YouTube